ファクタリングは売掛債権を早期に現金化できる便利なサービスですが、従来のファクタリングでは仕事を納入した後の請求書が必要となるため、納入前の仕事に必要な「仕入れ費用」や「人件費」等の資金ニーズに対応できませんでした。
そんな早期の資金ニーズに対応するのがこの記事で紹介する「注文書ファクタリング」です。
- 注文書ファクタリングは納品前の注文書を売却して資金化できるサービス
- 入金サイクルを最大で6ヶ月(180日)短縮する効果がある
- 従来のファクタリングに比べ手数料は高めの傾向がある
そもそもファクタリングとは?
まず、そもそもファクタリングとは「請求書(売掛債権)」をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、決済日前に現金化できるサービスです。
ここで、ファクタリング会社に売却するのは「請求書」ですから、ファクタリングで資金調達ができるのは商品やサービスを納入後、請求書を発行した後になります。
ファクタリングの仕組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

注文書ファクタリングとは?
一方、この記事で紹介する「注文書ファクタリング」は、仕事を受注した時点で発行する「注文書」を売却して資金調達ができるサービスです。
そのため、従来のファクタリングより格段に早い時期に資金調達ができ、事業の資金繰りの改善が可能となっています。
注文書ファクタリング | 従来のファクタリング | |
---|---|---|
買取対象 | 納品前の注文書 | 納品後の請求書 |
入金サイクルの短縮効果 | 最大6ヶ月短縮 | 1〜2ヶ月短縮 |
注文書ファクタリング4つのメリット
注文書ファクタリングのメリットは4つあります。
- 納品前に資金調達ができる
- 入金サイクルを最大6ヶ月短縮できる
- 売掛先の承諾が不要
- 償還請求権がないノンリコース契約
納品前に資金調達ができる
注文書ファクタリングの最大のメリットは、従来のファクタリングよりも早い「納品前」の段階で資金調達ができることです。
仕事を受注した時点でまとまった資金が調達できるので、資材の仕入れや人件費、仕事の着手金などにあてることができます。
これまで資金不足で受注できなかった大型案件にも対応できるようになり、事業拡大にもつながったという例も多くあります。
入金サイクルを最大6ヶ月(180日)短縮できる
注文書ファクタリングは最大6ヶ月(180日)先までに納入予定の注文書を買取対象としています。
つまり入金サイクルを最大で6ヶ月も短縮できるのです。
通常のファクタリングでは、最大30日〜60日後に支払い期日が到来する請求書が対象となるため、格段に長い入金サイクルに対応していると言えます。
長期の支払いサイトに悩んでいる方は、注文書ファクタリングを利用することで資金繰りを安定させることができるでしょう。
売掛先の承諾が不要
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類があります。
このうち、注文書ファクタリングでは、「利用者」と「ファクタリング会社」の2社で契約する2社間ファクタリングを採用しています。
注文書を買い取ってもらう際に、売掛先への通知や承諾は不要です。
そのため、売掛先に不信感を与えたり、取引に悪影響を与えたりという心配はありません。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

償還請求権がないノンリコース契約
注文書ファクタリングは従来のファクタリングと同じく、償還請求権がないノンリコース契約となります。
償還請求権とは、売掛先が倒産するなどして債権の回収が困難になった際に、ファクタリング利用者に支払いを要求できる権利です。
一般的に、ファクタリングでは償還請求権なしの「ノンリコース契約」を結びます。
そのため、万が一売掛先が倒産しても、利用者が売掛債権の返済義務を負うことはありません。
ノンリコース契約について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

注文書ファクタリング2つのデメリット
注文書ファクタリングの注意点は以下の2つです。
- 対応ファクタリング会社が少ないので相見積もりが難しい
- 従来のファクタリングよりも手数料が高め
対応ファクタリング会社が少ないので相見積もりが難しい
注文書ファクタリングは、従来のファクタリングに比べて取り扱っているファクタリング会社がまだ少ないのが現状です。
そのため、相見積もりで手数料等を比較しにくいのがデメリットといえます。
従来のファクタリングよりも手数料が高め
注文書ファクタリングの手数料は従来のファクタリングよりも2%〜5%程度高めになっています。
なぜならば、従来のファクタリングよりもファクタリング会社の未回収リスクが高くなるからです。
従来のファクタリングでは、すでに商品やサービスは納入済みで、最大30〜60日後の売掛金の支払日を待つだけの請求書を買取ます。
一方で、請求書ファクタリングでは従来のファクタリングに比べ回収時期の遅い(最大180日後)売掛金を買い取ることになります。
売掛金回収までの期間が長いほど、その間に売掛先やファクタリング利用者の経営が悪化し、ファクタリング会社の未回収リスクは高くなります。
よって、ファクタリング会社は従来のファクタリングよりも手数料をあげることで未回収リスクに備えているのです。
注文書ファクタリングに対応したファクタリング会社4選
注文書ファクタリングを取り扱っているファクタリング会社はまだ少ないのが現状です。
ここでは、注文書ファクタリングを取り扱っている下記4社を紹介します。
- マネーフォワード アーリーペイメント
- 株式会社ビートレーディング
- BESTPAY
- GMO BtoB早払い
マネーフォワードアーリーペイメント
「マネーフォワード アーリーペイメント」は、東証プライム上場企業、株式会社マネーフォワードの100%子会社であるマネーフォワードケッサイ株式会社が運営するオンラインファクタリングサービスです。
マネーフォワードケッサイ株式会社は、2017年に設立された会社で、アーリーペイメント以外にも企業間後払い決済サービス「マネーフォワードケッサイ」を運営しています。
マネーフォワードケッサイ株式会社が提供するサービスの累計取扱高は500億円(2021年9月初旬時点)の実績があり、信頼性はバツグンのファクタリング業者といえます。
資金化スピード(最短) | 最短2〜5営業日 |
取引可能額 | 合計50万円〜数億円 |
個人事業主の利用 | × |
手数料 | 1%〜10% |
必要書類 | 決算書一式(2期分) 直近の残高試算表 買取希望債権の証憑 入出金明細(直近6ヶ月分) |

ビートレーディング「注文書ファクタリング」

株式会社ビートレーディングは、平成24年(2012年)に設立された業界大手のファクタリング会社です。
取扱件数は2.1万社、累計取扱高551億円と業界トップレベルの実績があります。拠点も東京、仙台、大阪、福岡にあり、スピーディな対応が特徴です。
ビートレーディングの注文書ファクタリングでは、最大180日先に納品予定の注文書まで買取対象としているため、かなり早期に資金繰りを改善することも可能です。
資金化スピード(最短) | 即日 |
取引可能額 | 要問合せ |
個人事業主の利用 | ○ |
手数料 | 2%〜 |
必要書類 | 注文書 通帳3ヶ月分 本査定申込書 |

BESTPAY「注文書買取ファクタリング」

BESTPAYは東京都新宿区にある株式会社アレシアが運営する注文書買取ファクタリングサービスです。
手数料も5%〜という低水準に抑えられており、従来のファクタリングと比べても、遜色ないレベルの低コストで早期に資金調達ができます。
資金化スピード(最短) | 翌日 |
取引可能額 | 100万円〜3億円程度 |
個人事業主の利用 | ○ |
手数料 | 5%〜 |
必要書類 | 注文書 通帳3ヶ月分 本査定申込書 |

POファイナンスと注文書ファクタリングの違い
注文書ファクタリングとよく似たサービスに「POファイナンス」があります。
POファイナンスとは、日本のフィンテック企業「トランザックス」が提供する電子記録債権を活用した金融サービスです。
発注者(支払企業)と受注者(納入企業)の双方の同意の元、注文書を電子記録債権化し、金融機関がその電子記録債権を譲渡担保として受注者へ融資を行うというものになります。
POファイナンスと注文書ファクタリングの違いは以下のとおりです。
POファイナンス | 注文書ファクタリング | |
---|---|---|
取引形態 | 融資契約 | 売買契約 |
発注者の同意 | 必要 | 不要 |
審査難易度 | 厳しい | 柔軟 |
コスト | 低い | 高い |
償還請求権 | あり | なし |
大きなポイントとしては、POファイナンスは貸金にあたるため利息制限法が適用され、年率15%以下の低コストで融資を受けることができます。
ただし、支払企業(発注者)が倒産した場合には、金融機関の償還請求権にもとづいて受注者側に買い戻し義務が生じます(ウィズリコース契約)。
一方の注文書ファクタリングは債権売買契約にあたるため、利息制限法が適用されず、コストが高くなりがちです。
ただし、発注者が倒産した場合のリスクは金融機関が負うことになります(ノンリコース契約)。

注文書ファクタリングに関するQ&A

- 注文書ファクタリングの利用は、売掛先に知られますか?
-
注文書ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2者間での取引となりますので、売掛先への通知や承諾は必要ありません。
資金調達スタート
売掛先から不信感を持たれたりすることなく利用できるサービスです。
- 注文書ファクタリングは個人事業主も利用できますか?
-
すべてのサービスが個人事業主を対象にしているわけではありませんが、この記事でも紹介しているビートレーディングおよび、BESTPAYなら個人事業主も利用できます。
- 注文書ファクタリングと従来のファクタリングはどう使い分けたら良いの?
-
仕事を受注した段階で資金調達できる注文書ファクタリングは、仕事の仕掛りに必要な人件費や資材費などを自己資金や借入で賄いきれない際に利用するのがオススメです。
一方、納品後の段階で資金調達できる従来のファクタリングは、支払いサイトを短縮したい場合や、次の仕事の準備金の調達方法として利用できます。
まとめ
注文書ファクタリングの特徴、メリット・デメリットを解説しました。
- 注文書ファクタリングは納品前の注文書を売却して資金化できるサービス
- 入金サイクルを最大で6ヶ月(180日)短縮する効果がある
- 従来のファクタリングに比べ手数料は高めの傾向がある
従来のファクタリングが仕事を納入した後の請求書を資金化できるサービスであるのに対して、注文書ファクタリングは仕事を受注した段階で資金調達が可能なサービスです。
注文書ファクタリングも従来のファクタリングも、必要となる手数料は決して安くありません。
不用意に利用すると、かえって資金繰りを悪化させることにつながることもあります。かかる手数料を上回る利益が得られる場合に限り、慎重に利用するようにしてください。