すぐに返済できる目処があるならば「ビジネスローン」の利用を優先しましょう。どうしても資金繰りがきびしく、売掛債権がある場合は「ファクタリング」を検討しましょう。
「ファクタリング」と「ビジネスローン」の比較

ファクタリング | ビジネスローン | |
---|---|---|
調達可能額 | 売掛債権の範囲内 | 最高1,000万円程度 |
担保 | 不要 | 不要 |
保証人 | 不要 | 第三者保証人は不要 |
金利・手数料 | 調達額の5〜25% | 調達額の10〜15% |
返済期間 | 30日〜45日 | 最高10年 |
返済回数 | 1回 | 最高120回 |
審査基準 | 売掛先の信用 | 利用者の信用 |
審査スピード | 最短即日 | 最短即日 |
信用情報への掲載 | なし | あり |
融資利用への影響 | なし | あり |
特記事項 | 債務超過・税金未納での利用も○ | 債務超過・税金未納での利用は☓ |
「ファクタリング」の利点

審査が甘い
ファクタリングの最大のメリットは、審査が甘いことです。
ビジネスローンも銀行融資に比べれば審査は甘めですが、赤字決算や税金滞納中、リスケジュール中などの条件では、審査は通過しません。
ビジネスローンはあくまで融資です。そのため、信用力が不足している会社では融資は得られません。
一方で、ファクタリングは融資ではなく売掛債権の譲渡です。ファクタリング会社が重視するのは、ファクタリングを利用する会社の返済能力ではなく、売掛先の返済能力です。
そのため、ファクタリングでは売掛先の審査が厳しい反面、利用者側の審査は甘めになります。
よって、赤字決算や税金未納など、経営が行き詰まっているときには、ビジネスローンよりもファクタリングを利用するほうが、確実に資金調達できるといえます。
銀行融資への影響がない
ファクタリングなら、決算書に融資の記録が残らない
銀行融資では、どこの金融機関が貸しているのかを融資の判断材料にすることが多くあります。
どこから融資を受けているかは、決算書に明記されるため、もし、ビジネスローンなどノンバンクからの借入があると、今後の融資審査にマイナスの影響がでてくるのです。
これを回避するには、決算前にノンバンクからの借入を返済しきるしかありません。
一方でファクタリングの場合は「売掛債権譲渡」であり、借入ではないので「決算書の科目明細」に譲渡の記録が残りません。
「売掛債権を売った」という記録しか残らないのです。
決算数値への影響が少ない
銀行の融資審査で、企業の格付けに利用される決算数値には、以下のようなものがあります。
- 当座比率 = 当座資産 / 流動負債
- 流動比率 = 流動資産 / 流動負債
- 固定比率 = 固定資産 / 純資産(自己資本)
- 固定長期適合率 = 固定資産 / ( 固定負債 + 純資産 )
- 自己資本比率 = 純資産 / 総資産
- 売上高経常利益率 = 経常利益 / 売上高
- 総資産経常利益率(ROA) = 経常利益 / 総資産
- 債務償還年数 = 有利子負債 / (営業利益 + 減価償却費)
- インタレスト・カバレッジ・レシオ = 営業利益(+受取利息配当金) / 支払利息(+手形売却損)
ビジネスローンの場合は、総資産が増えるため、総資産経常利益率(ROA)は低下します。同様にビジネスローンを利用すると、以下のような指標も悪化してしまいます。
- 当座比率
- 流動比率
- 固定比率
- 固定長期適合率
- 自己資本比率
- 総資産経常利益率(ROA)
- 債務償還年数
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
一方で、ファクタリングの場合は、もともとあった資産である売掛債権を売却して現金に変えているだけなので、総資産や利息に大きな変動はありません(正確には、手数料分だけ総資産が減少します)。そのため、ほとんどの決算指標に大きな影響はありません。
今後、銀行融資を受けようと考えている場合に有利なのは、ファクタリングといえます。
「ビジネスローン」の利点

低金利(ファクタリングと比較して)
ビジネスローンは、銀行融資よりも金利が高くなっています。それでも年率は5.0%~15.0%くらいが相場です。
一方でファクタリングの場合は、(利息ではなく手数料となりますが)その相場は5.0%〜20.0%くらいです。
一見するとビジネスローンと大差ないように思えます。しかし、ファクタリングの場合、売掛金が実際に入金されるまでは1〜2ヶ月程度です。つまり、1〜2ヶ月の「月利」で20%、年率に換算すると120%〜という暴利で、ファクタリング会社からお金を借りていることになります。
利息負担という意味では、ビジネスローンが圧倒的にすぐれています。
即日資金化
ファクタリングで、即日資金化を謳っている業者は多いです。しかし、実際に即日資金化をしようとすると、以下のような条件が必要です。
- 書類が完備されている
- 午前中のできるだけ早い段階に申込み完了
- ファクタリング会社の審査担当者に余裕がある
特に、ファクタリングの場合は、必要書類が多く(銀行融資に比べれば少ないですが)、以下のようなものが必要です。
- 決算書:直近2期分
- 試算表
- 会社の登記簿謄本
- 注文書・契約書・発注書・納品書・請求書など
- 入出金の通帳
- 納税証明書
一方で、ビジネスローンの場合は、決算書の数値がわかれば自動的に数分で審査結果がでます。
よって、どうしても即日で資金が必要という場合、ビジネスローンに分があるといえます。
入出金が自由にできる
大手消費者金融が提供している「ビジネスローン」の場合は、ローンカードを使って24時間365日、銀行ATM・コンビニATMで何度でも借入・返済ができます。
利便性という面では「ビジネスローン」が優れている点と言えます。
結局「ファクタリング」と「ビジネスローン」のどちらを選ぶべき?

売却できる売掛債権があるか?
ファクタリングを利用するには、まとまった額の売掛債権が必須です。
売掛債権がない場合は、ビジネスローンで決まりです。
審査に通るかどうか?
以下のような状況であれば、ビジネスローンの審査に通らない可能性が高いです。
- 赤字決算
- 税金未納
- リスケ中
- 債務整理中
- 他社からの借入金額が高額
このような状況でも、ファクタリングなら利用できる可能性があります。
即日融資が必要か?
前述の通り、即日融資が必須ならば、ビジネスローンのほうが確実性が高いです。
すぐに完済できるか?
ビジネスローンの場合、決算まで持ち越してしまうと銀行融資にマイナスの影響がでてしまいます。利息負担も小さいとはいえません。しかし、すぐに返済できる目処があるならば、負担は限定的です。
一方、ファクタリングの場合は、もともと1〜2ヶ月以内に入る予定だった売掛債権を前倒しで資金化しているだけなので、決算への影響は少ないですが、手数料が非常に大きくなります。
よって返済の目処があるならば、ビジネスローンのほうが経営へのダメージは小さいといえます。
まとめ
本記事では、「【ファクタリングとビジネスローン】どちらがおすすめ?」について解説しました。
すぐに返済できる目処があるならば「ビジネスローン」の利用を優先しましょう。どうしても資金繰りがきびしく、売掛債権がある場合は「ファクタリング」を検討しましょう。
どちらにもメリット・デメリットがあります。会社の状況に応じてより適切なほうを選ぶようにしてください。